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企業担当者必見!外国人エンジニアの在留資格2025

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企業担当者必見!外国人エンジニアの在留資格2025
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Updated at 19/05/2025

1. はじめに:なぜ今、日本企業に外国人エンジニア採用が求められるのか?

国内IT人材不足の現状と外国人エンジニア活用の重要性

「国内のITエンジニア採用、年々厳しくなっているな…」多くの企業様から、このような切実な声を耳にします。私自身も長年、企業の採用支援に携わる中で、この課題の深刻さを肌で感じてまいりました。実際、日本のIT業界では人材不足が深刻化しており、経済産業省の「IT人材需給に関する調査」 によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されています。この数字は、国内のIT人材だけでは今後の目まぐるしい技術革新や企業のデジタルトランスフォーメーションに対応しきれない可能性を示唆しており、私たちにとって看過できない状況です。

こうした背景から、外国人エンジニアの採用は、単なる人手不足の短期的な対策という枠を超え、グローバルな視点や多様な技術・知見を組織に取り入れるための戦略的な取り組みとして、その重要性を増しています。貴社の持続的な成長戦略においても、優秀なIT人材の確保は、今まさに取り組むべき喫緊の課題ではないでしょうか。本記事が、その一助となれば幸いです。
 

在留資格とは?企業が理解しておくべき基本ルール

さて、外国人エンジニアの採用を具体的に進める上で、まず避けて通れないのが「在留資格」の理解です。在留資格とは、外国人が日本で行うことができる活動の種類と範囲を法的に定めたもので、いわば「日本で適法に働くための許可証」と言えるでしょう。この許可証がなければ、どんなに優秀な人材を見つけても、残念ながら採用には至りません。これは、企業が外国人採用を行う上での大前提となります。

適切な在留資格を持たない外国人を雇用することは、「不法就労助長罪」として企業側も処罰の対象となる可能性があります。さらに、取得した在留資格で認められた活動範囲と、実際に任せる業務内容が異なる場合も法令違反となり得ます。企業としてのコンプライアンスを徹底し、優秀な人材を適切かつ安心して受け入れるための基盤として、在留資格制度の正しい理解は極めて重要です。
 

2. 外国人エンジニア採用で企業が知るべき主要在留資格

外国人エンジニア採用において、企業の人事担当者や経営者の皆様にぜひ押さえていただきたい主要な在留資格があります。ここでは、最も代表的な在留資格である「技術・人文知識・国際業務」について、そのポイントと企業側のメリットを詳しく解説します。

最も一般的:在留資格「技術・人文知識・国際業務」の企業側ポイント

技術・人文知識・国際業務」(よく「技人国(ぎじんこく)」と略されます)は、外国人エンジニアが日本で働くための最も一般的な在留資格と言えるでしょう。この在留資格は、その名の通り、

  • 理学・工学などの自然科学の分野(技術
  • 法律学・経済学などの人文科学の分野(人文知識
  • そして外国の文化に基盤を有する思考や感受性を必要とする業務(国際業務

という3つの幅広い分野をカバーしています。非常に多くの職種に対応できるため、外国人採用の基本としてまず理解しておくべき在留資格です。

ITエンジニアの場合は、主にこの「技術」の分野に該当し、システムエンジニア、プログラマー、ネットワークエンジニア、データベース設計者といった多様な職種が含まれます。企業側として特に留意すべき点は、採用候補者の専門性と実際の業務内容との整合性を、客観的な資料をもって明確に説明できることです。つまり、候補者が大学や専門学校で学んだこと、あるいは過去の職務経歴で培ってきたスキルが、入社後に担当する予定の業務と具体的にどう関連しているのかを、説得力をもって示す必要があります。

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3. 企業が行う「技術・人文知識・国際業務」ビザ申請サポート体制

外国人エンジニアの採用において、企業側のサポートは在留資格申請の成否を左右する重要な要素です。ここでは、特に「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請にあたり、企業がどのような点に注意し、どのようなサポート体制を整えるべきか、私の経験も踏まえて見ていきましょう。
 

候補者の適格性確認:企業がチェックすべき必須要件

学歴要件の確認ポイントと注意点

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得するためには、原則として以下のいずれかの学歴・職歴要件を満たす必要があります。

  • 大学(短期大学を含む)を卒業し、関連する分野を専攻していること
  • 日本の専修学校の専門課程を修了し、関連する分野を学んでいること(「専門士」または「高度専門士」の称号が必要)
  • 10年以上の実務経験(これには、大学や専門学校で関連分野を専攻した期間も含まれる場合があります)を有していること。(ただし、「国際業務」に従事する場合は、翻訳・通訳、語学指導、広報、宣伝、海外取引業務等、外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務について3年以上の実務経験で認められる場合があります)

企業としては、候補者から提出される卒業証明書や成績証明書を丹念に確認し、専攻分野と日本で従事させる予定の業務内容との間に、明確な関連性があることを客観的に説明できるようにしておくことが極めて重要です。特に海外の大学を卒業している候補者の場合は、その教育機関が母国で正式に大学として認可されているか、また、授与された学位が日本の学士号に相当するものとして扱われるか等も、事前に確認しておくとスムーズです。
 

実務経験要件の確認ポイントと注意点

学歴要件を直接満たさない場合でも、前述の通り10年以上の関連実務経験があれば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請できる可能性があります。ただし、このルートで申請する場合は、その実務経験の内容と期間を客観的に証明することが非常に重要になります。

企業側の確認ポイントとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 職務経歴書の詳細な内容確認: これまでの担当業務内容、使用してきた技術やツール、関わったプロジェクトの規模や役割などを具体的にヒアリングし、記録します。ここでのヒアリングが、後の採用理由書作成にも活きてきます。
  • 前職(または現職)の企業からの推薦状や在籍証明書の取得: 可能であれば、具体的な業務内容や期間、役職などが明記された書類を準備してもらうよう依頼します。これらは客観的な証拠として非常に有効です。
  • 実績を示すポートフォリオや成果物の確認: エンジニアであれば、開発したソフトウェアやシステム、設計図など、具体的な成果物を見せてもらうことで、スキルレベルを具体的に把握します。
  • 技術面接による実務能力の確認: 書類だけでは判断しきれない実践的なスキルや問題解決能力を、専門知識のある面接官が見極めます。

特に実務経験を主な根拠として申請する場合は、その経験が単なるアシスタント業務や補助的な作業ではなく、真に専門的・技術的な業務であったことを、具体的かつ客観的な資料(プロジェクト計画書、業務報告書、設計書の一部など、可能な範囲で)をもって証明できるように準備することが求められます。
 

【重要】情報処理技術試験合格者の特例と確認方法

ITエンジニアの採用において、非常に有利な特例があります。それは、法務大臣が告示をもって定める特定の情報処理技術に関する試験に合格している場合、関連分野の学歴や10年以上の実務経験がない場合であっても、その合格自体が専門性・技術性を有することの有力な証明となり得る、というものです。特に、日本の情報処理技術者試験(例:基本情報技術者試験、応用情報技術者試験など)や、アジア地域で共通の基準として実施されているITPEC試験(アジアITプロフェショナル試験)などに合格している場合は、専門性の証明として非常に有効に働くことがあります。これは企業にとって、採用の門戸を広げる大きなチャンスです。

企業側の確認ポイント:

  • 合格証明書の原本または認証されたコピーの確認: 偽造や失効がないか、慎重に確認します。
  • 試験の種類と合格レベルの確認: どの試験に、どのレベルで合格しているのかを正確に把握します。
  • 合格した試験内容と予定されている業務との関連性の整理: 合格した試験で証明される知識・技術が、実際に日本で行う業務とどう結びつくのかを説明できるようにしておきます。

情報処理技術試験の合格証明は、特に学歴や職歴だけでは専門性の証明が難しい場合に、それを補う客観的で強力な資料となります。
 

雇用契約の準備:報酬・労働条件で企業が守るべきこと

外国人エンジニアとの間で締結する雇用契約書(または労働条件通知書)においては、以下の点に特に注意し、明確に記載する必要があります。

  • 報酬額が、同様の業務に従事する日本人従業員と同等以上であること。 これは非常に重要なポイントです。
  • 労働時間、休憩、休日、休暇、時間外労働の取り扱い、福利厚生などの労働条件が、日本の労働関連法規に準拠し、かつ明確に記載されていること。
  • 担当する職務内容が、申請する在留資格「技術・人文知識・国際業務」の範囲内であることが明確に示されていること。
  • 雇用契約の期間(有期または無期)が明示されていること。

特に報酬については、最低賃金を上回ることは当然として、同じ企業内で同様の職務に従事する日本人従業員と比較して、不当に低い報酬設定になっていないかが厳しく審査されます。不当に低いと判断される報酬設定は、在留資格申請の不許可理由となる可能性が非常に高いと認識しておくべきです。
 

在留資格申請手続き:企業はどこまでサポートすべき?

「申請手続きは本人(外国人)が行うもの」と考えがちですが、私の経験上、実際には企業側の積極的かつきめ細やかなサポートが、申請の成否を大きく左右します。企業としてどこまで関与すべきか、具体的なプロセスと共に見ていきましょう。

海外在住エンジニアの採用プロセスと企業の役割

海外に居住しているエンジニアを新たに採用する場合、企業はまず日本国内の地方出入国在留管理局に対して「在留資格認定証明書交付申請」を行うことになります。多くの場合、この申請は受け入れ企業が代理人となって(あるいは行政書士などの専門家に依頼して)行います。大まかなプロセスは以下の通りです。

  1. 企業が、採用内定者から必要書類(パスポートのコピー、学歴・職歴証明書など)を集めます。
  2. 企業が、自社の情報(登記簿謄本、決算書類、会社案内、雇用契約書、採用理由書など)と共に、地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書の交付申請を行います。
  3. 審査の結果、認定証明書が無事に交付されたら、企業はそれを採用内定者に国際郵便などで送付します。
  4. 採用内定者は、その認定証明書とその他の必要書類を添えて、自国の日本国大使館または総領事館で査証(ビザ)の発給申請を行います。
  5. 査証が発給されたら、来日し、日本の空港等での入国審査を経て、就労が開始できます。

このプロセスにおいて、企業は特に申請書類の「活動の内容、待遇等」の欄を具体的に、かつ正確に記載し、なぜその外国人を採用する必要があるのか、どのような専門性を期待しているのかを明確に説明する責任があります。採用理由書は、企業の熱意を伝える重要な書類と心得ましょう。
 

国内留学生エンジニアの採用プロセスと企業の役割

既に日本国内の大学や専門学校に「留学」の在留資格で滞在している学生を採用する場合は、卒業後に「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への「在留資格変更許可申請」が必要となります。この場合の一般的なプロセスは以下の通りです。

  1. 企業と留学生の間で雇用契約(または内定)を締結します。
  2. 留学生本人が、卒業(見込み)証明書、成績証明書、企業の詳細資料(企業から提供を受ける)、雇用契約書などを添えて、自身の居住地を管轄する地方出入国在留管理局に在留資格変更許可申請を行います。
  3. 審査の結果、許可が下りれば、新しい在留資格が付与され、卒業後(または許可後)から就労を開始できます。

この場合、申請自体は留学生本人が行いますが、企業は、留学生の専攻と採用後に予定している業務内容との関連性を明確に示す資料(職務内容説明書など)や、雇用条件、企業の安定性・継続性を示す各種書類(会社案内、登記簿謄本、決算書類など)を迅速かつ正確に提供することで、申請を強力にサポートする必要があります。特に、卒業を間近に控えた留学生を採用する場合は、卒業時期と就労開始希望時期のタイミングを考慮し、計画的に申請準備を進めることが肝要です。ここでのサポートが、内定者の安心感にも繋がります。
 

企業が準備すべき提出書類リストと作成のポイント

在留資格の申請の種類や企業のカテゴリー(規模や上場状況など)によって必要となる書類は異なりますが、一般的に企業側が準備すべき主な書類は以下の通りです。企業の状況に応じて、これ以外の書類も求められることがありますので、必ず最新情報を出入国在留管理庁のウェブサイト で確認するか、専門家にご相談ください。

企業区分主な必要書類(企業側準備分)
上場企業など(カテゴリー1,2)雇用契約書(または労働条件通知書)の写し、会社案内の写し、採用理由書(任意だが強く推奨)、登記事項証明書
非上場の中小企業など(カテゴリー3)上記に加え、直近年度の決算報告書(貸借対照表・損益計算書)の写し、前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し、事業計画書(該当する場合)
創業間もない企業など(カテゴリー4)上記に加え、より詳細な事業計画書、資金計画書(資本金の形成過程がわかるものなど)、代表者や役員の経歴書、事務所の賃貸借契約書の写しなど、事業の実態と継続性を具体的に示す資料。特にこのカテゴリーは丁寧な書類準備が求められます。

特に中小企業や創業間もない企業の場合、企業の安定性・継続性を示す資料の準備が非常に重要になります。事業内容やこれまでの業績(あれば)、今後の事業展開の見通しなどを具体的かつ客観的に示し、外国人材を採用して事業を成長させていく明確な必要性と計画性を、説得力をもって説明できる資料を丁寧に準備しましょう。
 

審査期間の目安と採用スケジュールの立て方

「在留資格認定証明書交付申請」の標準的な審査期間は、出入国在留管理庁 によれば通常1ヶ月から3ヶ月程度とされています。しかしながら、これはあくまで目安であり、申請先の地方入国管理局の混雑状況、企業のカテゴリー、業種、申請内容の複雑さ、申請時期などによって、審査期間は大きく変動します。特に、新年度が始まる前の3月~4月や、秋季の9月~10月などは申請が集中し、審査に通常よりも時間がかかる傾向があるため注意が必要です。

企業の採用計画においては、以下のようなスケジュール感を考慮し、十分に余裕を持たせることが賢明です。

  • 採用内定から実際の就労開始まで、最低でも3ヶ月~4ヶ月程度の期間を見込む。
  • 内訳として、申請書類の準備に2~3週間、入管での審査に1~3ヶ月(場合によってはそれ以上)、認定証明書交付後の本人への送付、現地でのビザ申請手続き、そして来日の準備に1ヶ月程度を想定する。
  • 特に新卒採用の場合は、候補者の卒業時期と入社希望時期を正確に把握し、それに合わせた逆算スケジュールで計画的に手続きを進める必要があります。

また、万が一、申請が不許可となった場合の対応策(不許可理由の分析と再申請の検討、あるいは別の候補者の選考など)も、リスク管理として事前に考慮しておくことが望ましいでしょう。焦らず、計画的に進めることが成功の秘訣です。
 

審査を通過する企業、しない企業:許可を得るための企業の取り組み

出入国在留管理庁の審査では、主に以下の3つの大きなポイントが重視されると、私はこれまでの経験から感じています。

  1. 企業の安定性・継続性: 健全な財務状況であるか、事業内容に具体性があり、将来性が見込めるかなど。
  2. 外国人雇用の必要性・相当性: なぜ日本人ではなく、その外国人を採用する必要があるのか。その外国人の専門性や経験が、企業のどの業務に不可欠なのか。
  3. 適切な受入れ体制: 提示している労働条件や待遇が、日本の法令に準拠し、かつ日本人従業員と比較して不当なものでないか。入社後のサポート体制はどうか。

これらの観点から、許可されやすい企業には以下のような特徴が見られます。

  • 安定した業績と明確な事業計画を有している。
  • 外国人採用の具体的な必要性(特定の言語能力、海外市場の知見、国内では希少な特殊技術など)を、具体的かつ論理的に説明できる。
  • 採用する外国人の専門性や経験に見合った、適切な報酬と公正な労働条件を提示している。
  • 過去に不法就労や労働法規違反といった問題を起こしておらず、コンプライアンス意識が高い

一方で、残念ながら不許可になりやすい企業には、次のような傾向が見られることがあります。

  • 財務状況が著しく不安定である、または継続的な大幅な赤字状態である。
  • 外国人採用の必要性が曖昧で、「誰でもよいから人手が欲しい」といった印象を与えてしまう。
  • 同様の職務に従事する日本人従業員と比較して、著しく低い報酬設定になっている。
  • 事業内容と、採用しようとしている人材の専門性や経験との間に、明らかな矛盾や不整合が見られる。

申請時には、「なぜ、この会社が、この外国人でなければならないのか」「この外国人のどのような専門性を活かして、どのような具体的な業務で活躍してもらう計画なのか」という点を、具体的かつ説得力のある形で、熱意をもって説明することが、審査を有利に進める上で非常に重要です。
 

どんなエンジニア職なら採用可能?企業が注意すべき職務内容

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で、IT・エンジニア関連職として認められる主な職種には、以下のようなものがあります。

  • システムエンジニア(SE)
  • プログラマー
  • ネットワークエンジニア
  • データベースエンジニア
  • AIエンジニア/データサイエンティスト
  • ゲームプログラマー/開発エンジニア
  • Webデザイナー(ただし、コーディングやシステム開発など、技術的な専門性を活用する場合
  • プロジェクトマネージャー(技術的なバックグラウンドや専門知識を有する場合

一方で、以下のような業務は、専門的・技術的な業務とは見なされず、「単純労働」と判断され、原則としてこの在留資格の対象とはなりません。

  • 単純なデータ入力作業のみ
  • ヘルプデスクの一次電話対応のみ(高度な技術的知識を要しない場合)
  • マニュアルに沿った定型的な操作指導のみ
  • 工場などの製造ラインでの単純作業

企業としては、採用予定の外国人が担当する業務が、専門的知識・技術を要する分野に明確に該当することを、具体的な職務内容として定義し、説明できるようにしておくことが不可欠です。「エンジニア」と一言で言っても、その業務内容が具体的でなければ、審査官には専門性が伝わりません。どのような専門知識や過去の経験、あるいは習得した技術を駆使して、どのような課題解決や価値創造に取り組むのかを、明確に示しましょう。

特に、AI、ブロックチェーン、データサイエンスといった比較的新しい職種については、その職務の専門性や、その業務を遂行するために必要とされる高度なスキルセットを、より詳細かつ丁寧に説明することで、在留資格との適合性を的確にアピールする必要があります。ここを曖昧にすると、審査で不利になることもありますので、注意が必要です。
 

4. 外国人エンジニア採用後の定着支援と雇用管理

「採用して終わり」では、決してありません。むしろ、外国人エンジニアが入社してからが、本当の意味での「共創」のスタートです。ここでは、採用後の定着支援と適切な雇用管理について、企業が取り組むべき重要なポイントを、私の経験も交えながら解説します。ここでの取り組みが、企業の成長を大きく左右すると言っても過言ではありません。

在留期間更新:企業が行うべきサポートとタイミング

外国人従業員が日本で安心して働き続けるためには、在留期間の更新手続きが不可欠です。このプロセスにおいて、企業として以下のようなサポートを行うことが重要となります。

  • 更新時期の的確な管理と事前通知:
    • 従業員一人ひとりの在留カードに記載されている在留期間の満了日を、人事部門などで一元的に管理するリストやシステムを整備します。Excelなどでの簡単な管理でも構いませんが、見落としがないようにしましょう。
    • 在留期間満了日の少なくとも3ヶ月前を目安に、該当する従業員に対して更新準備を開始するよう、事前に丁寧に通知・アナウンスします。
    • 更新申請に必要な書類のリストや、手続きの一般的な流れについて、分かりやすく情報提供を行います。
  • 必要書類の準備サポート:
    • 企業が発行する必要のある書類(例:在職証明書、直近の源泉徴収票、給与支払証明書など)を、従業員からの依頼に応じて迅速かつ正確に発行します。
    • 場合によっては、会社の登記簿謄本や決算報告書の写し(企業のカテゴリーによる)なども必要となるため、これらも速やかに提供できるよう準備しておきます。
    • 任意提出ではありますが、企業の経営状況や従業員の勤務状況、今後の期待などを記した推薦状(理由書)を作成することも、審査を有利に進める上で効果的な場合があります。
  • 更新申請の手続きそのものへのサポート:
    • 従業員が地方出入国在留管理局へ申請に行くための休暇取得に、最大限配慮します(有給休暇の取得推奨など)。
    • 企業の状況や従業員の希望に応じて、人事担当者が申請に同行したり、企業として申請取次行政書士に代理申請を依頼したりすることも検討します。
    • もし従業員が個人的に専門家(行政書士など)に相談したいという場合には、信頼できる専門家を紹介するといった支援も考えられます。

在留期間更新の審査では、入社時に申請した業務内容と、現在の実際の業務内容が一致しているか、約束された適切な待遇(給与、労働時間など)が引き続き維持されているかなどが、改めて確認されます。そのため、日々の業務記録や人事評価の記録、給与明細などを適切に保管・管理しておくことも、間接的に更新手続きをスムーズに進める上で重要となります。
 

転職希望者が出た場合の企業の対応と法的義務

残念ながら、様々な理由で外国人従業員が転職を希望するケースも起こり得ます。その場合、企業として誠実かつ法的に適切な対応をすることが求められます。

  • 離職関連書類の適切な発行:
    • 従業員から要望があった場合には、在職期間、担当した職務内容、退職理由などを正確に記載した離職証明書や退職証明書を速やかに発行します。
    • 特に、次の転職先での在留資格手続きに必要となる場合があるため、迅速かつ正確な情報提供を心がけます。
    • 場合によっては、英語版の書類作成にも対応できると、より親切でしょう。
  • ハローワークへの届出義務の履行:
    • 外国人従業員が離職した場合、企業は「外国人雇用状況届出(雇入れ時と同様に、離職時にも届出が必要)」を、管轄のハローワーク(公共職業安定所)に提出する法的義務があります。
    • この届出は、原則として離職日の翌日から起算して10日以内に行う必要があります。遅延すると指導の対象となることもありますので、徹底しましょう。
  • その他の社会保険・税務等の手続き:
    • 健康保険、厚生年金、雇用保険といった各種社会保険の資格喪失手続きを、適切かつ迅速に行います。
    • 未払いの給与や、該当する場合には退職金の支払いなどを、就業規則や雇用契約に基づいて適切に精算します。
    • 会社から貸与していたPC、携帯電話、社員証などの物品の返却確認を徹底します。

企業には、退職を希望する従業員の転職活動を不当に妨害するような行為は、当然ながら許されません。在留資格に関して不正確な情報を提供したり、必要な証明書類の発行を不当に拒否したりすることは、絶対にあってはなりません。円満な退職プロセスを心がけ、必要なサポートを誠実に提供することが、長期的に見れば企業のレピュテーション(評判)維持にも繋がると、私は考えています。
 

外国人エンジニアのキャリアパス支援と定着促進策

外国人エンジニアの長期的な活躍と企業への定着を図るためには、彼らが日本で、そしてその企業で、自身のキャリアをどのように発展させていけるのか、具体的な道筋と成長の機会を提示することが不可欠です。彼らが「この会社で働き続けたい」と思える環境づくりが重要です。

  • キャリア開発支援と目標設定:
    • 上司と部下(外国人エンジニア)との間で、定期的なキャリア面談(例:半期に一度、年に一度など)を実施し、本人のキャリア志向や目標、課題などを共有します。ここでの対話が、信頼関係の構築にも繋がります。
    • 業務に必要な専門スキルや語学力の向上のための研修機会(社内研修、外部セミナー参加支援、資格取得支援など)を積極的に提供します。
    • 例えば、「技術・人文知識・国際業務」から「高度専門職」へのステップアップや、将来的にはチームリーダーやプロジェクトマネージャーといった管理職への登用など、具体的なキャリアのロードマップを共に描き、その実現をサポートします。
  • 多文化共生を推進する職場環境づくり:
    • 社内コミュニケーションにおいては、言語の壁をできる限り低減するための配慮(例:重要な会議資料や社内通達の多言語対応、翻訳ツールの活用推奨、社内英語(または共通語)研修の実施など)を行います。
    • 全従業員を対象としたダイバーシティ&インクルージョン研修などを実施し、異なる文化や価値観を持つ人々が互いに尊重し合い、協働できる企業風土を醸成します。
    • 文化的な違いから生じる誤解や摩擦を未然に防ぐための啓発活動や、相談しやすい環境づくりも重要です。
  • 生活面での継続的なサポート:
    • 入社時の住居探しや銀行口座開設、携帯電話契約といった初期サポートだけでなく、日本での生活に慣れてきた後も、例えば子どもの教育に関する情報提供や、地域の国際交流イベントの紹介など、生活面での細やかなサポートを継続することで、従業員の安心感を高めます。
    • 病気や事故といった緊急時にも、会社として相談に乗れる体制や、必要な情報(例:多言語対応可能な医療機関リストなど)を提供できる準備をしておくと、非常に心強いものです。
  • 長期的な貢献に対するインセンティブ設計:
    • 昇進・昇格の機会については、国籍に関わらず公平性を担保します。
    • 日本での永住許可取得を目指す従業員に対しては、そのための情報提供や、企業として可能な範囲でのサポート(例:推薦状の作成など)を検討します。
    • もし家族を母国に残して単身で来日している従業員がいる場合には、一時帰国のための休暇制度の柔軟な運用や、将来的な家族帯同の可能性についても、企業の状況に応じて配慮を示すことが、モチベーション維持に繋がることがあります。

特に、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、バングラдешといった、多様な国籍の従業員が共に働く職場では、それぞれの文化や宗教、生活習慣に最大限配慮しつつ、公平かつ透明性の高い人事評価制度や労務管理体制を構築することが、組織全体のエンゲージメントを高める上で極めて重要です。
 

企業が注意すべきコンプライアンスとトラブル防止策

外国人雇用におけるコンプライアンスの遵守は、企業の社会的責任を果たす上で当然のことであると同時に、無用な労務トラブルや法的リスクを回避するための、いわば自己防衛策としても極めて重要です。「知らなかった」では済まされないケースも多々あります。

  • 在留資格外活動の厳格な防止:
    • 採用時に許可された在留資格の活動範囲と、実際の業務内容が常に一致していることを定期的に確認します。
    • 特に、「技術・人文知識・国際業務」の資格を持つエンジニアに、専門性を伴わない単純作業(例:長時間のデータ入力のみ、清掃作業など)のみに従事させることは、在留資格外活動とみなされるリスクがあるため、絶対に避けなければなりません
    • 従事している業務内容を客観的に示すための、適切な業務記録(日報、週報、プロジェクト管理ツールの記録など)を保管しておくことも、万が一の調査に備える上で有効です。
  • 労働条件の適正な管理と遵守:
    • 労働基準法、労働契約法、最低賃金法といった日本の労働関連法規を完全に遵守します。
    • 国籍に関わらず、同じ仕事内容・責任範囲の従業員には同じ待遇を保証する「同一労働同一賃金の原則」を徹底します。
    • 時間外労働の適切な管理(36協定の遵守、割増賃金の正確な支払い)、有給休暇の取得推奨など、過重労働を防止し、健康的な労働環境を維持するための労務管理を徹底します。
  • 差別禁止と公正な処遇の徹底:
    • 採用選考、人事評価、昇進・昇格、教育訓練の機会提供など、あらゆる人事労務管理の場面において、国籍や人種、信条などを理由とした一切の差別を行わないことを、社内外に明確に宣言し、実践します。
    • パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、マタハラなどに加え、外国人であることを理由とした嫌がらせやいじめ(ゼノフォビア的言動など)も断じて許さないという姿勢を明確にし、防止策を徹底します。
    • 多様なバックグラウンドを持つ従業員一人ひとりが尊重され、安心して能力を発揮できるインクルーシブな企業文化を醸成します。
  • コミュニケーション円滑化とトラブル未然防止策:
    • 就業規則や社内ルール、安全衛生に関する重要事項などは、必要に応じて多言語で明示し、全従業員が正確に理解できるように努めます。
    • 上司と部下、あるいは従業員同士が、国籍や言語の壁を越えて気軽にコミュニケーションを取れるような、風通しの良い職場環境づくりを奨励します(例:定期的なチームミーティング、社内SNSの活用、懇親会の開催など)。
    • 外国人従業員が職場で困ったことや悩み事を気軽に相談できる窓口(人事担当者、産業医、外部相談機関など)を設置し、その存在を周知徹底します。

コンプライアンス違反は、企業の社会的信頼を大きく損なうだけでなく、場合によっては「不法就労助長罪」のような厳しい罰則(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科)の対象となる可能性も否定できません。この点については、スタッフ満足のブログ記事 などでも警鐘が鳴らされています。法令遵守は、企業を守る盾でもあるのです。
 

5. まとめ:戦略的な外国人エンジニア採用で、企業の未来を拓く

本記事では、外国人エンジニア採用における在留資格の基本的な知識から、具体的な申請プロセス、採用後の定着支援に至るまで、企業担当者の皆様に押さえていただきたい実践的なノウハウを、私の経験も交えながら詳しく解説してきました。

技術・人文知識・国際業務」という在留資格を深く理解し、そのメリット・デメリットを踏まえた上で、自社の採用戦略に合致した適切な選択をすること。そして、候補者の適格性を慎重に見極め、透明性の高い採用プロセスを設計し、企業としてできる限りの申請サポート体制を構築すること。これらが、外国人エンジニア採用を成功に導くための、いわば王道と言えるでしょう。

日本のIT業界における深刻な人材不足は、残念ながら今後も当面続くと予想されています。このような状況下において、外国人エンジニアの採用は、もはや単なる人手不足への対応策という位置づけではなく、グローバルな視点や多様な技術・知見を組織のDNAに組み込み、企業を新たな成長ステージへと導くための、極めて重要な戦略的取り組みとして捉えるべきです。これは、未来への投資に他なりません。

適切な知識と十分な準備、そして何よりも「共に成長していこう」という真摯な受入れの姿勢を整えることで、外国人エンジニアは必ずや貴社の大きな力となり、ビジネスの未来を明るく照らしてくれるはずです。外国人材の積極的な活用を通じて、貴社のビジネスがグローバルな舞台でさらに大きく発展されることを、心より願っております。
 

よくある質問 (FAQ)

Q1: 企業が外国人エンジニアを採用する際、主にどの在留資格を考慮すべきですか?

A1: 主に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が一般的です。特に優れたスキルや豊富な経験を持つトップレベルの人材の場合は、「高度専門職」も重要な選択肢として視野に入れるとよいでしょう。「技術・人文知識・国際業務」は、エンジニアや人文系の専門職などが、専門的な知識・技術を活かした業務に従事するための基本的な就労ビザです。一方、「高度専門職」は、学歴・職歴・年収などがポイント制で評価され、基準を満たした場合に与えられる、より多くの優遇措置が付いた在留資格です。

Q2: 「技術・人文知識・国際業務」の学歴や職歴は、企業としてどう確認すれば良いですか?

A2: 学歴については、卒業証明書や成績証明書の提出を求め、専攻分野が採用後に予定している業務内容と明確に関連しているかを確認します。職歴で専門性を証明する場合は、具体的な業務内容、使用した技術、関わったプロジェクトの規模や自身の役割などが詳細に記載された職務経歴書を重視します。可能であれば、前職の企業からの在籍証明書や推薦状なども取得できると、証明の信頼性が高まります。これらの書類が外国語で作成されている場合は、正確な日本語翻訳を確保することが、スムーズな申請手続きのためには不可欠です。

Q3: 在留資格申請で企業側の問題で不許可になるのはどんな場合ですか?

A3: 主な不許可理由としては、企業の財務状況が著しく不安定である(例:継続的な大幅赤字、債務超過など)、外国人採用の具体的な必要性や、その外国人が担当する業務内容の専門性が不明確である、提示している報酬額が同様の職務に従事する日本人と比較して著しく低い、あるいは事業内容と採用しようとしている人材の専門性との間に明らかな矛盾や関連性の欠如が見られる、といった場合が挙げられます。特に小規模な企業や創業間もない企業の場合は、事業の安定性と継続性を客観的な資料(詳細な事業計画書、資金調達の証明、主要取引先との契約書など)で十分に立証することが、審査を通過する上で非常に重要となります。

Q4: 企業が在留資格認定証明書を申請する場合、審査期間はどのくらい見込めば良いですか?

A4: 出入国在留管理庁 が公表している標準処理期間は1ヶ月~3ヶ月程度ですが、これはあくまで目安です。実際には、申請先の地方入国管理局の混雑状況、企業の規模や業種、申請内容の複雑さ(例:専門性の説明が難しい職種など)、申請時期(特に年度末や秋口などの繁忙期)などによって、審査期間は大きく変動します。そのため、採用計画においては、申請準備から認定証明書の交付、そして本人の来日準備期間まで含めて、最低でも3ヶ月~4ヶ月程度の余裕を持つことを強くお勧めします。

Q5: 外国人エンジニア採用にあたり、企業が準備すべき主な書類は何ですか?

A5: 基本的に、雇用契約書(または労働条件通知書)の写し、会社案内(事業内容が具体的にわかるもの)、採用理由書(なぜその外国人が必要なのか、どのような業務を任せるのかを説明する書類)、登記事項証明書、そして直近の決算報告書(貸借対照表・損益計算書など、非上場企業の場合)などが必要です。ただし、企業の規模(カテゴリー1~4)や業種、あるいは採用する外国人の個別の状況(学歴、職歴、国籍など)によって、これら以外にも追加で書類の提出を求められる場合があります。正確な必要書類については、必ず最寄りの地方出入国在留管理局のウェブサイト で最新情報を確認するか、ビザ申請を専門とする行政書士などの専門家に事前に相談することをお勧めします。

Q6: 採用した外国人エンジニアの在留期間更新は、企業として何をサポートすべきですか?

A6: 在留期間の更新は、外国人従業員が安心して働き続けるために非常に重要です。企業としては、更新時期の管理と本人への事前通知(例:在留期限の3ヶ月前)、在職証明書や前年の源泉徴収票、住民税の課税・納税証明書など、企業が発行または収集をサポートすべき書類の迅速な準備、必要に応じて会社の登記簿謄本や決算報告書の最新版の提供、そして本人が更新手続きのために休暇を取得しやすいような職場環境への配慮などが主なサポート内容となります。また、更新申請時には、入社時に許可された活動内容と現在の業務内容が一致しているか、適切な待遇が維持されているかなども改めて確認されるため、日頃からの適切な労務管理が前提となります。

Q7: 外国人エンジニアの採用で活用できる助成金などはありますか?

A7: 外国人雇用に特化した助成金というものは種類が限られますが、一般的な雇用関連の助成金や人材開発支援に関連する助成金の中で、外国人従業員も対象となるものがあります。例えば、従業員のスキルアップのための研修費用を補助する「人材開発支援助成金」や、特定の要件を満たす労働者(外国人を含む)を雇用した場合に支給される可能性のある助成金などが考えられます。ただし、これらの助成金制度は年度や政府の政策によって内容が頻繁に変更されたり、対象となるための詳細な要件が設定されていたりします。そのため、最新の情報については、厚生労働省のウェブサイト や管轄の都道府県労働局のウェブサイトで確認するか、社会保険労務士などの専門家に相談して、自社の状況で活用できる制度があるかどうかを確認することをお勧めします。また、一部の地方自治体では、独自に外国人材の受け入れや定着を支援するための補助金制度を設けている場合もありますので、所在地の自治体の情報もチェックしてみるとよいでしょう。

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